平成元年に今の会社に転職。不届きなことに大喪の礼の日に引っ越しを敢行し移り住んだ家は、築二十数年、六畳と四畳半の和室に台所、風呂は灯油焚き、便所は汲み取り、壁と屋根はトタンの無気密無断熱住宅で、広い玄関が贅沢な、とても小さな家でした。
家の前は車がやっと通れるくらいの砂利の私道、道の向こうは一面の畑で、農家の庭先に並ぶ同型8軒のうちの1軒が我が家なのでした。
ご近所さんは素朴な、でもちょっぴりユニークでバラエティーに富んだ方々で、近所付き合いは一昔前のホームドラマのようです。時々、大家である農家のお婆さんが玄関先に芋なんかを置いてくれたりして、なかなかほのぼのとした生活でした。
最寄りの駅まで畑と住宅地が混在する相模原の台地を歩いて25分(たつのこ邑も最寄りの駅まで自転車で25分!)、もちろんバスもありましたが、当時からバス嫌いなので、台風の日でも根性で歩いていました。
何故、若く独身の私がこんな住宅を選んだのでしょう?
駐車場込みで¥4万と格安の家賃が大きな理由だったのでしょうが、広々とした畑の中の戸建て、裏はちょっとした林で野鳥や虫の声が聞こえる、こんな環境にも惹かれたのに違いありません。
友人達はとやかく言うものの、私は非常に満足し、田舎風の生活を満喫していました。
しかし、少々特殊な環境だけにいろいろな事件が…
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